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【vol.33】September.30.2025
フットボールのある生活に寄りそう、LUZ e SOMBRAのブランドづくり# with MOTOHASHI TAPE

「LUZ e SOMBRA(ルースイソンブラ)」は、フットボールの感性とストリートカルチャーを機能的なアパレルに落とし込むブランドです。モノと体験を結び、現場のリアリティから新たなプロダクトを生む。従来のスポーツウェアと一線を画すモノづくりは、どんな想いから生まれ、どう支持を得てきたのでしょうか? その歩みの中で出会った本橋テープとの協業にも触れつつ、プロダクトデザイナー日永田祐作(ひえだ ゆうさく)さん、PRマネージャー渡邊慧(わたなべ さとる)さんに話を聞きました。

ブランドを支えるリアリティ

2005年、独立心の強い4人のフットサル仲間が立ち上げ、手売りで広がっていったストリート発祥のフットボールブランド、それが「LUZ e SOMBRA(ルースイソンブラ。以下ルース)」です。ブランド名はポルトガル語で「光と陰」の意。ピッチで光を浴びるプレーから、その裏側にある練習や日常までを支えるアイテムを提案してきました。
ブラジルの街角で、何気なくボールが行き交う風景。その肩の力の抜けた空気をまとうルースのウェアは、競技の場での機能性を満たしつつ、街にも自然に馴染みます。ユニフォームを街で着るという潮流に安住するわけでなく、フットボールの感性を日常にも落とし込む。そんな新しい提案を続けるブランドです。

北新横浜に本社と店舗を構え、静岡県浜松市、愛知県安城市でも直営店を運営。ショップとして自社のアイテムを販売するだけでなく、店内にフットサルコートやカフェ、DJブースも併設するなど、「衣・食・蹴・遊」が一体となった、一日過ごせる遊び場として解放されています。

ルースの定番アイテムであるプラシャツはカラーバリエーションも豊富。

ルースのブランドコンセプトは「地球とボールで遊ぶライフスタイル」。フットボールだけでなく、スケートボードやダンス、DJといったミックスカルチャーの土壌で育まれたインディペンデント精神と、まずやってみるというDIY精神が、今のルースを形作っています。

「もちろんアイテム自体の良さや使いやすさも大事にはしているんですけど、世の中にこういうのもあっていいんじゃない? という、世の中の流行りとは別のベクトルで考えていて。むしろ自分たちが流行りを作るぞっていうのが僕たちの原動力でもありますね。
なので、机の上ではなく、現場と生活から生まれるのがルースのモノづくりの根本。フットボールを楽しんでいるときはもちろん、チームの練習に試合、遠征。はたまた家族との時間、海やキャンプの遊び……。いろんなシーンで感じる“これ欲しいよね”という感覚を手がかりに、裏のストーリーが感じられるモノづくりを意識しています」
そう語るのは、プロダクトデザイナーの日永田さん。プロダクトデザインを担当されていますが、元は Fリーグ(日本フットサルリーグ)の選手として活動しながらルースのものづくりに関わり始めたといいます。同社は数十名規模の会社ですが、そのうち現役・元現役の選手が5名ほどクルーとして携わっており、ブランドのスタイルとリアリティを支えています。

また、会社としての運営体制もユニークで、DIY色が濃いのも印象的です。例えばブランドのメッセージを伝えるビジュアルのクリエイティブも、社内で完結。本社には専属のフォトグラファーと撮影スタジオがあるため、商品撮影もイメージムービーの撮影もお手のもの。

「店頭POPはもちろんカタログなども、国内外での取材・撮影・執筆、モデル手配から編集・デザインまで、すべて内製しているのが僕たちらしさです。横浜の店舗内装も自分たちで手がけ、モザイクタイル張りもDIYで。出来不出来はさておき、やれることは自分たちでやるというのが、ルースの文化になっています」。入社以来14年にわたりプロダクトデザインやPR、制作を担う渡邊さんはそう話してくださいました。

交わりが生み出す、新しい価値

フットボールを取り巻くカルチャーに寄り添い、そしてより楽しむために、製品は作って終わりではなく、体験まで含めて価値にしたいと考えるのがルース流です。練習着であるプラクティスシャツやパンツなどのベーシックなものに限らず、大人向けのハイエンドラインであるLUZ TOP TEAMや、コーチ、スタッフのためにデザインされたTHE WORKING MAN。ほかにもキッズやファミリー向けのラインまで手がけ、ライフスタイルウェアの提案まで広がっています。

「例えば、TWMは“指導現場の過酷さ”を軽減したいという思いが出発点です。仕事として関わっている方はもちろん、フットボール少年・少女の親なら一緒にボールを蹴る機会も多いですし、少年団では親がボランティアでコーチや審判を務めることもあります。夏は炎天下、冬は極寒でもコートに立つ。その指導者たちの苦労を、服と道具でどう助けるか。ブランド創設から20年の間に、作り手も使い手もライフステージが変わってきましたが、その変化も発想の重要なヒントになっています」(日永田さん)

一方で、ユーザーとつながるイベントもブランドの重要な柱です。クラブを貸し切り、パネルでコートを組んでの3on3。生演奏とMCが盛り上げる白熱のフットボールのカルチャーイベント「天下一蹴道会」を皮切りに、逗子映画祭でのビーチサッカー、そして自然のなかで[音・蹴・衣・食・住]を体感する年一回の「LUZ BEACH CAMP FUTEBOL PARAISO」。モノとコトの連動が、ルースらしさを支えています。
「ブラジルでは道端でボールを蹴る光景があり、砂浜を歩けばサンバの演奏やビーチサッカーにも出会える。そんなフットボールの世界観が日本でも広がれば、と考えています。実際、うちのイベントは海外のそれとは違う形ですが、音楽やアート、スケートなどストリートカルチャーが混じる独自の場をつくってきて、ブランドの価値観を体現するものになっています」(渡邊さん)

本橋テープとのモノづくり

モノとコトの連動。プロダクトと体験を一体で設計する姿勢は、素材起点で暮らしを少し良くする本橋テープの思想とも、どこか通じ合うように感じます。そんな両社が出会ったのは、御殿場で開かれる野外フェスの「ACO CHiLL CAMP」でのワークショップ出店でした。隣り合ったブースで互いのものづくりに興味を持ち、共通の知人の縁も重なって交流が深まり、すぐに「タフフック」にてコラボが実現。テントやタープなどのアウトドアから、車内やインテリアの吊り収納として便利なタフフックに、ルースの「光と陰」を想起させるモチーフやトライバル柄をあしらいました。
「餅は餅屋。アパレルは別として、僕らはギアや小物などの専門領域は得意なパートナーと組むのが良いと思っていて、タフフックはまさにそれ。自分たちでもイベント出店時のディスプレイや、プライベートでも愛用していて、これは試合や練習のときにビブスやタオルをかけるのにも便利だろうと確信したんです」(日永田さん)

本橋テープ×LS MULTI STRAP 4,400円(税込)。キーホルダーストラップ、ボトルやスマホストラップなど様々な使い方ができます。

そして、タフフックでの手応えが次のアイテムへと繋がり、今年は「マルチストラップ」も登場。モバイルストラップの延長としてさまざまな小物を自在に携行できる一本で、日常のちょっとした面倒を解消。フットボールの現場では、指導者や審判の携帯品をスマートに持ち運べるのも魅力です。おかげさまで、早速品薄状態が続いています。

今回はシンプルなロゴプリントのデザイン。バックルで長いストラップを分離してハンドストラップとしても使用できます。

アイデアを形にするために

服飾資材メーカーでありながら、自社製品でのコラボ提案にも積極的な本橋テープ。細幅織物やロープをどう使えば活きるかを常に模索していて、ブランド側から寄せられるアイデアは、私たちにとってもワクワクする挑戦となっています。
実際、資材としてウェアの一部に採用いただいたり、製品企画のご相談を日永田さんから受けたこともあります。また、ルースのスタッフの皆さんが撮影トリップの途中で工場に立ち寄ってくれたこともあり、社外との往復が新しい発想につながることを、私たち自身実感しているところです。

「普段店頭に立っているスタッフも含めて工場にお邪魔したのですが、作り手の顔や温度に触れ、ものづくりの視点に一歩踏み込めたことで、お客様への言葉にも奥行きが出たと感じています。それに、個人的にありがたいなと思うのが、本橋さんは僕の固まり切っていないアイデアでも、とても前のめりになって聞いてくださること。それに対して提案もしてくださって、その知見と即対応は、クリエイションに刺激を与えてくれています。
最近だと、小さく収納できて、ひらけばボールをたくさん収納できるバッグとか。コーチング用のカラーコーンをスマートに束ねて持てるホルダーなどできないかなと、真剣に、でも雑談のように楽しく話していました」(日永田さん)

イベントを通して伝えたい想い

年に一度、ルースが自然のなかに設える遊び場「LUZ BEACH CAMP FUTEBOL PARAISO」。これは静岡・掛川の浜辺で行われる、音楽・フットボール・衣・食・住が混ざり合う、新しいフットボールカルチャーのアウトドアイベントとなっています。
「今年掲げているテーマは『SOUND CONNECTION』。DJのグルーヴ、MCの声、食の音、自然の音……。さまざまなサウンドを介して、人とコンテンツが輪になる場づくりを目指しています。裸足で砂と芝に立って、音と一緒に遊ぶ。あのとき感じた音が記憶に残って、人生をちょっと豊かにしてくれる。そんな時間を一緒に作れればと思っています」(渡邊さん)

「今年は2DAYSの開催となり、日帰りでも泊まりでも楽しめるイベントとなっています。砂浜を舞台にジュニアのビーチサッカー大会やビーチクリニック、フードカーの出店なども盛りだくさん。飲食やワークショップは有料ですが、入場無料で観戦やプロによるクリニック、ライブも楽しめます。ルースが目指す“自然神秘主義フッチボリスタ”の世界観を感じていただけるイベントですので、どうぞふらりと遊びに来てください」」(日永田さん)
本橋テープも2022年から毎年ワークショップで出店しており、今年もルースとの共同ワークショップを実施。耐久性に優れたナイロンコードを使って、ボールホルダーとシューズホルダーを制作できます。本橋テープが大切にしている「素材で体験をつくる」という情熱を、会場から発信していますので、ぜひ10月11日(土)、12日(日)は掛川に足をお運びください!

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コラボ元となった製品:

商品名:MUTISTRAP
展開色:黒、チョコ、カーキ、オレンジ、アイボリー
価格:3,300円(税抜き)
URL:http://www.motohashi-shop.com/item/MULTI/