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【Vol.027】 June.28.2024
国民的スナック菓子をライフスタイルに?
じゃがりことの新たな取り組み
# with MOTOHASHI TAPE

取引メーカーさんと本橋テープが、どんなシナジーを生み出しているのかを探る企画「#with MOTOHASHI TAPE」。今回は、日本を代表するスナック菓子メーカー「カルビー」さんの新しい雑貨ブランド、「じゃがりこ と」が発表した「じゃがりこホルダー」の取り組みについてご紹介します。この春に大反響を得たこのユニークなアイテムはどのように誕生したのか、Calbee Future Laboの松本知之さん、長澤君枝さんのおふたりにお話を伺いました。

スナック菓子をより身近に感じてもらうために

独自の製法により、“はじめカリッとあとからサクサク”の心地よい食感が楽しめるスナック菓子「じゃがりこ」。1995年に「女子高生がカバンに入れて持ち歩けるお菓子」というコンセプトのもと生まれ、現在に至るまで多くの人々に愛されています。そんな、お出かけのお供でありたいというじゃがりこブランドの誕生から変わらぬ想いを、カルビーさんでは「じゃがりこ と」という雑貨ブランドで表現しています。

Calbee Future Laboディレクター 松本知之さん。

「弊社内に設けられた『Calbee Future Labo』は、カルビーの持つさまざまな商品やブランドのグッズ化をしたり、あるいはサービスの展開を企画する部署です。カルビーのIP(知的財産)の接点を拡大して、長年培ってきたカルビーの開発や製造の技術とは異なる角度から、社外の新たな視点や技術を用いたお菓子以外の商品開発を行なっています。そのひとつのプロジェクトとして生まれたのが雑貨ブランド『じゃがりこ と』というわけです」

そう語るのは、同部署のディレクターを務める松本さん。営業、経営企画、ポテトチップスブランドマネジャー、全社マーケティング戦略の立案などの業務に従事してきた、カルビー一筋30年の大ベテランです。

じゃがりこのサラダ(緑)とチーズ(赤)をイメージして作られた、国産のスニーカー。2023年にクラウドファンディングで発売されました。

これまでにもカルビーのお菓子をモチーフにした雑貨は、一部ライセンス商品という形で作られてきたそうですが、Calbee Future Labo発足後はカルビーが主導して企画を立案。お菓子のプロモーションのためではなく、お菓子ブランドそのもののファンを増やすような取り組みを行っています。その中でも肝入りのプロジェクトのひとつが『じゃがりこ と』で、じゃがりこをおやつとして楽しんでもらうだけでなく、雑貨を通じて朝起きてから夜寝るまでの間にワクワク感を提供し、新しい価値を作ることを目標としているそうです。

Calbee Future Laboデザインチーム マネジャー 長澤 君枝さん。

そんなお菓子ブランドとしては珍しい試みを、デザイン面から支えるのがデザインチームの長澤さん。約10年マーケティング本部所属のインハウスデザイナーを務め、2023年より現部署のマネジャーをされています。

「過去にもいろんなグッズや雑貨は出ているのですが、それらとは一線を画して、『じゃがりこ と』では、さりげないデザインで日常に馴染むような、こだわりの強いアイテム作りに取り組んでいます。そのためには、やっぱりモノづくりにすごくこだわってらっしゃる方々と一緒に作りたいなということで、第一弾は国内の老舗メーカーと手を組んでじゃがりこカラーのスニーカーを、第二弾は本橋テープさんと一緒にじゃがりこ専用ホルダーを企画しました」

本橋テープとの出会い

本橋テープとCalbee Future Laboとの出会いは2023年。弊社とお付き合いのあった方からのご紹介があり、静岡の工場にお越しいただいたことをきっかけに、今回のコラボレーションに発展していきました。

「ご紹介いただいた方が、『本橋テープの工場見学は絶対面白いし感動するよ』と言われていたのですが、実際お伺いするとその通りでした。我々は食品メーカーなので、テープというモノがどのように作られていて、そしてどのようなことに使われているかということを意識したこともありませんでした。工場で見せていただいたモノのひとつひとつが新鮮で、こちらの発想が膨らむアイデアもたくさんご提案いただきました(松本)」

本橋テープではテープやコードなどの自社で製造する素材だけでなく、それらを用いて作ったバッグや日本酒ホルダーなど、ユニークなオリジナル商品も展開中。メーカーさんとの商談の際には、実際に工場や製品をご覧いただくことも多く、私たちにできることやなにかアイデアに繋がる提案ができないかと常に心がけています。

「工場を見せていただいてすぐに『じゃがりこ と』で商品開発をしようという話になりまして、その後何度も通わせていただきました。当初はまったく違うアイデアを考えていたのですが、本橋テープさんに何度かお邪魔してディスカッションしていた際、弊社のチームメンバーが本橋さんのショールームにかけられているポリエステルコードを見て、『これがじゃがりこ柄だったらかわいいね』と言ったのがきっかけで、そこから具体的なじゃがりこホルダーづくりが始まりまったんです(長澤)」

共鳴するクラフトマンシップ

食品メーカーであるカルビーさんと細幅織物メーカーの本橋テープでは業種がまったく異なりますが、モノづくりの核心となる部分は同じ。あくまで工場生産ではありますが、こだわりを持って多くの手間を惜しまないというのは、共通する信念です。

「テープって頭に思い浮かぶのは製品だけで、はじめて工場にお邪魔するまではオートメーション化された大量生産品だろうと思っていたのですが、実際工場にお邪魔すると、生産する手前にも糸や機械のセッティングを含めものすごい数の工程があってまさに職人の世界。そうしてセットされた無数の糸が一箇所に集まって織られていく様子を拝見して感動しました(松本)」

「じゃがりこには、契約生産者さんが育ててくださったジャガイモを使用。カルビーのスナック菓子も工業製品的に機械的に作られてるんだろうなっていうふうに思われがちですが、実際は技術のある多くの人の手が関わることで製造されているんです。そんなカルビーの独自の製品作りに光が当たることはあまりありませんが、『じゃがりこ と』のプロダクトでは、国内で人の手をかけながら丁寧に作られてるメーカーさんと協力し、私たちのモノづくりへのこだわりが垣間みえるようなアイテムを企画しています(長澤)」

対話と試作から生まれたアイデア

準備期間約半年を経て形になったじゃがりこ専用ホルダーは、2024年5月にクラウドファンディングMakuakeにて発表(現在受付終了)。じゃがりこのカップを吊り下げられるテープ製のホルダーと、じゃがりこの柄を再現したロープ&チャーム、そしてテープを編み込んだポーチという4点セットで販売され、当初の目標を大きく上回る数の応援購入をしていただきました。

じゃがりこのコンセプトの通りに、どこへでも持ち運べて、好きな場所で好きなときにじゃがりこを食べられるようにと考えられたホルダーパーツ。これ自体はいたって単純な構造ですが、ストラップに装着して肩掛けした際の程よいゆとりや、通常サイズとLサイズ両方のじゃがりこのカップを支えられるようなサイズ設計にたどり着くまでに、何度も試作を繰り返しました。

商品化されたのは、定番人気のサラダとチーズ。当初はそのパッケージデザインのカラーを活かすデザインが考えられていましたが、「じゃがりこ と」のプロジェクトチームとの対話の中で、じゃがりこそのものの色味をロープで再現するというアイデアが生まれました。

「例えば、じゃがりこサラダの生地に練り込まれている緑のつぶつぶはパセリ、オレンジはニンジンなのですが、この色味を表現するまで本橋テープさんにはいくつもロープのサンプルを作っていただきました。ベースとなるじゃがりこのジャガイモ部分の色が白っぽすぎると、視覚的にパセリが暗く見えてしまう。つぶつぶのバランスがイマイチなど、そこは何度も試作を繰り返していただきました(長澤)」

「今回のセットにはチャームが付属しているのですが、これも実は偶然で生まれたもの。本橋テープさんの方で準備していただいたロープのサンプルが大体7cmちょっとの長さで、ちょうどじゃがりこと同じサイズ。まさにじゃがりこと瓜二つで、当初は予定になかったのですが、じゃがりこファンの方に喜ばれるだろうとチャームを作ることになりました。今回は特に私たちの思いつきを具現化していただく作業になったのですが、これが製品として実現できたのは、こちらの意見に真摯に耳を傾けてくださった本橋テープさんのおかげ。やはりクリエイティブな対話ができるのは企画と製造の現場が近く、加えて話しやすい雰囲気や皆さんのお人柄なのかなと思います(松本)」

プロモーションの一環で、ワークショップも開催

カルビーさんと本橋テープでは、じゃがりこ専用ホルダーのPRもかねて5月にはワークショップも開催。キャああンプフェス「ACOCHILL CAMP 2024」を会場に、ナイロンテープを使ったポテトチップスホルダー作りの体験を提供しました。

「ちょうど、じゃがりこ専用ホルダーのクラウドファンディングの時期とイベントの時期が重なったので、PRも含めて一緒にどうですかとご提案いただいて、ワークショップでもコラボレーションをさせていただきました。本橋さんは毎年出展されていますが、私たちにとっては今回がはじめてのワークショップ出展。カルビーのお菓子を楽しんでいただける方々と直接触れ合う機会は意外と少ないので、とても新鮮な体験となりました。

また、キャンプであっても遠足であってもピクニックであっても、やはり気軽にどこでも食べられるというのがスナック菓子のよいところ。ワークショップ限定ですが、ポテトチップスホルダーはとてもいいアイデアでした。おかげさまで2日間で380組以上の方に参加していただき、大盛況のまま終了。お子さんがポテトチップスを背負っている姿がとても可愛くて、その景色をコマーシャルにできたらいいのになと思っちゃったほどです(松本)」

じゃがりこをもっと身近に、日常に取り入れてもらうためのユニークな雑貨を提案する『じゃがりこ と』。モノづくりに情熱を持つメーカーとコラボレートし、新しいアイテムを生み出す活動は、私たちにとって大きなモチベーションとなります。私たち本橋テープも、真摯な姿勢でモノづくりに取り組みつつ遊び心を忘れないことで、テープの新たな可能性を広げていきたいと思います。