# with MOTOHASHI TAPE
取引メーカーさんのもとを訪れ、本橋テープがどんな役割をになっているかを探る企画「#with MOTOHASHI TAPE」。今回お話を伺ったのは、ファッションブランド「ELNEST CREATIVE ACTIVITY」を手がける会社「株式会社マイトリー」さん。渋谷区富ヶ谷にあるショップ兼カフェにて、同社の代表でありエルネストの企画・生産を担う宮田亮さんに、本橋テープとのコラボレーションや、関わりについてお話を伺いました。
エルネストを支えるクリエイション
モデルで俳優の井浦新さんがディレクターを務めるブランド「ELNEST CREATIVE ACTIVITY(以下エルネスト)」。2007年の立ち上げ以来、シーズンごとに国内外の特定のフィールドへのオマージュを込めたデザインやグラフィックを制作するなど、独自の視点からのクリエイションも魅力です。また、実際に旅から得たインスピレーションを落としこんだウェアは、冒険の旅はもちろん日常という名の旅でも活躍してくれます。
今回訪れた東京・富ヶ谷の「ELNEST TOKYO// MIGHTRY」は、エルネストの直営店。カフェも併設されており、外から中を覗くと、鳥の巣のように見える流木を使って装飾されたカウンターが目を引きます。店内には木の温もりや異国情緒を感じさせる落ち着いた空間が広がり、エルネストのアイテムがフルラインナップで展開。日本の伝統工芸や、セレクトしたアウトドアギア、コラボレーションアイテムも並び、ブランドのアイデンティティが表現されています。
ショップは以前、代々木上原の駅近くに構えていましたが、2022年に現在の閑静な富ヶ谷エリアに移転。元はパン工場だったという広々とした空間を活かした店内には、ゆったりとくつろげる時間が流れています。
そして、実はそのバックヤードには、運営会社であるマイトリーのアトリエがあり、プリントと刺繍の加工場も併設されているのです。
「ブランドとして服作りの1から10まですべて自分たちで行うことはできませんが、できることはなるべく自分たちでやりたいと思っています。そのため、裏にウェア用のプリンターや刺繍ミシンを導入しました。自分たちの表現の幅が広がるだけでなく、他のブランドやバンドなどからも製作を請け負ったりもしているので、横のつながりも強くなるんですよね」
そう語るのは、マイトリーの代表である宮田亮さん。エルネストの企画・生産も統括し、資材の選定や生産管理の面からブランドを支えています。
互いを高め合うコラボレーション
エルネストは旅先で出会った自然をもとにしたカモフラージュ柄を作るなど、コンセプチュアルなモノづくりでも注目される一方、さまざまなブランドとのコラボレーションでも話題が絶えません。
「初めてのコラボはKEENのシューズで、以来バックやキャンプギアなどの専門性の高いブランドや日本の伝統工芸品と手を組んできて、2023年からはファッションブランド同士のコラボに発展しました。コラボ相手の得意な部分やブランド性を崩さないように、それでいて僕らだったらこうしたいという意見を擦り合わせて、自分たちの力では作れないモノを作り上げられる。それがコラボの魅力ですね」
鋭い審美眼をもってさまざまなブランドと関わり、魅力的なアイテムを送り出して来た宮田さん率いるエルネスト。
そんな本橋テープとエルネストとのお付き合いは、弊社の営業担当である大石の個人的なラブコールが始まり。好きなブランドに本橋テープの製品を知っていただきたいとの一心で製品を紹介していく中で、宮田さんの目にタフフックが目に止まりました。
「お声がけいただいた最初の頃は、平たくいうと普通の副資材メーカーさんだと思ってたんです。しかし、イベントに出店されているところを訪れて改めてお話をしたら、モノづくりにこだわっているのはもちろん、部材の供給という枠に捉われず、自分たちで新たな魅力を発信されていることがわかったんです。特にタフフックは、他では見たことのないギアでしたし、これは面白いなと思って別注の相談をさせていただきました」
本橋テープはアパレル副資材としての細幅織物を製造するメーカーですが、宮田さんには“本橋テープ”を一つのブランドとして認識していただき、2019年にはタフフックとの初のコラボレーションアイテムが誕生しました。
カラーを変えるだけでなく、エルネストがデザインしたチロリアンテープを配したことに加えて、「本橋テープの名前はどんどん出して行ったほうが良いですよ」とのご提案で、本橋テープの織りネームも配されました。
「それ以降は、本橋さん側から提案をいただいたり、僕たちも『こういうものができませんか?』と気軽にやり取りをする関係に。お互い面白さで突っ走ってしまうところもあり、『一升瓶ホルダー』を白神山地の迷彩で作ったり、お互いあまり直接的な利益は二の次にして、挑戦的な取り組みもさせてもらっています」
互いを深く知ることで可能となるモノづくり
マイトリーが主催する「舞鳥祭」は毎年7月に軽井沢を舞台に行われるキャンプイベントで、ワークショップも話題。私たち本橋テープも2017年からブースを設けてイベントを楽しんでいます。
このワークショップの面白いところは、普段同社が付き合っているデニムメーカーや、レザーファクトリーなど、手に職のある工場も招致しているところです。
「モノの最終的な出先はブランドなのですが、ワークショップでお客さんを楽しませられるネタを持ってるのって、普段からものづくりをしている工場や職人さんだったりするんです。だから、舞鳥祭ではエルネストの生産に携わっている方々に積極的に声をかけたりしてますし、そういった意味でも工場の見学もできるだけ行くようにしてるんですよ」
モノづくりの現場も大切にしている宮田さんは、井浦新さん達とともに本橋テープの本社工場にも見学に来ていただいたこともあります。
「どういう設備があってどんなことが出来るのか、逆にどんなことが難しいのかを僕らが把握するのは、お互いの仕事を円滑に進める上でも重要です。工場に行った際、本橋さんのところに工業用ミシンが何台もあって縫製も行っていることも知ったので、サコッシュの製造をお願いするなど、新しい展開に繋がりました」
「多くのブランドもそうかもしれませんが、生地やボタンなどの付属品から始まるアパレルのアイデアって結構あると思うんです。僕たちは面白い素材や部材があると、そこから考えを膨らませて、その資材を作っている人たちが想定していない使い方をしてみよう、という発想が生まれ、新しいものが生まれたりするんです」
副資材メーカーとしての本橋テープ
先に挙げたコラボレーション以外にも、エルネストのアパレルで本橋テープ製品を使っていただいています。
「本橋テープに出会う前は、テープに関して『この素材いいな』とか『もっと硬いやつがいいな』とか『柔らかいやつがいいな』といった意識はもちろんあったのですが、それをオリジナルで作っていただくということは発想自体していませんでした」
「本橋さんとの出会いがあったからこそ、オリジナルの柄が入ったテープを作ることが可能になりました。縫製工場に一部お任せする場合もあるので、すべてのテープ類をお願いしているわけではないのですが、エルネストでは、色使いや見た目、機能に特徴があるものや、オリジナルを作りたいときに本橋テープにお世話になっています。
代表的なのはリフレクター入りの細引きロープ。反射糸が入ったもので、ブランドカラーである青みがかったターコイズとグレーの組み合わせをオーダーして作っていただきました。こういう部材をオリジナルで作ってもらうのは、大きなブランドでないとロット的に難しいと思っていましたが、柔軟に対応していただけるのはありがたいことです」
「直接お話しすると、こちらの意図を汲んでいただけますし、ブランドも好きでいてくれるので、新しい製品ができたときに提案していただくことも多く、一緒にモノづくりに参加していただいている感じです」
最近のアイテムで本橋テープの製品をご使用いただいた例として、2024年にアップデートされた「THE WIND TROUPE UT Vest」があります。本橋テープが新たに、伸縮性のある素材を織り組織に取り入れたPP素材のストレッチテープを開発したので、パンツのベルトにどうかと宮田さんに提案させていただいたところ、ちょうどそのとき企画が進行していたベストにぴったりだと採用していただきました。
「肩部分のストラップをこのベルトにすることで、見た目は思い描いていた通りのまま、負荷が分散されて着心地も良くなってます」
宮田さんはメーカーが想定していない使い方をしたくなるとおっしゃっていましたが、部材を供給する私たちにとっても、思いもよらない使い方を考えていただけることは、大切なインスピレーションの源になります。
本橋テープとエルネストは、互いの強みを活かしながら新しいものづくりに挑戦してきました。これからもブランドと副資材メーカーという枠を越えて協力を続け、新たな挑戦を共にできることを心から楽しみにしています。